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The End Contents / 旭音エマ

 

「ここには彼のすべてがあった

 愛も冒険も 生きる意味も

 取り憑かれた様に心象を刻んで

 彼のこころのすべてが ここで命を宿した

 この世界が足を止めたのは

 夜更け よいこは眠る時間

 無数の寝息に取り残された青灯

 無力な自我ひとつ

 『所詮 悉く虚構』

 金平糖の砂 散らした 藍色の冬空は

 同じ星座を映し続けている

 終わりの日に辿り着けず 止まってしまった世界の 

 続きを彼だけが知っている

 彼が筆を折った理由は 今はもう知る術もない

 最上階の剣も 最下層の棺も

 物語の行く末を教えてはくれなかった

 少年時代の投影が 未だ大人になれずに

 持て余した夢想の残渣を腐らせている」

 次の頁 創る孤独に蝕まれた魂は

 いとも容易く 明日の喉笛に手をかけた

 終わりに辿り着けず 止まってしまった世界の続きを

 “彼”だけが知っている

「箒星を呼び止めても願いは叶わず

 夜鷹は既望の月に縫い留められ夢幻に墜ちていく

 終わりの日に辿り着けず 止まってしまった世界の

 続きを誰かが望むなら、それは篝火と成り得るか?

 今はもう知る術もない」

※スマートフォンから閲覧するとレイアウトが崩れる場合があります。ご了承ください。

/ 朝音ボウ

 機械でもできる仕事と吐き捨てられたから
 ぼくは機械にならなくちゃ
 生をどうこうするには脆弱すぎる脚
 要らない思考能力は無為萎縮して

 管を巻いて意図を吐いて まっしろ

 宙を泳いだ言葉は 一体どこへ行けばいい
 能のない翅にも利用価値 あると言ってよ
 食べられやしない言葉を 全体どこへ捨てりゃいい
 渇いた唇の端から 堰を切って落葉
 幼若な朝を編む


 嘗ての青空の記憶を探すのはやめにしよう
 昨日と同じように生きよう
 生来飛べないのか「嘗て」が在ったのか
 今となっては誰も知らないので
 思考をやめよう

 宙を泳いだあなたは 一体どこへ着いたろう
 吹き寄る葉風 ぼくら塵のように無力なのに
 どうしてその鱗翅を広げてみようと思ったのだろう
 のうのうと日々を食んでいれば たのしいこともかなしいこともない
 それじゃだめかな


 管を巻いて意図を吐いて まっしろ

 宙を泳いだ言葉は 一体どこへ行けばいい
 能のない翅にも利用価値 あると言ってよ
 縋り付く場所が朽ちたら ぼくはどこへ行けばいい
 渇いた唇の端から 堰を切って落葉
 あなたの残り香

 


 (Why did I release that hand?)

リエントリ / 松田っぽいね

 味のしない失望を噛み拉くような
 ぬるい渦から抜け出すと決めた
 胸臆に従うの それできみが不幸になっても

 馬鹿みたいに煩って出した答えを
 冷たいと思うなら思えばいいよ

 嫌なことを嫌と言って壊れるような愛しさは
 避けられず壊れていたでしょう
 あたしの味覚は憂鬱に鈍ったままだけど
 案外当たり障りなく生きていけるものね きみなんていなくても


 狭窄の痛みが右肩に散っていて
 本当の病巣を長らく見失って
 心なしか駆け足の鼓動と 鉛の沈黙が胸を衝く


 嘘みたいに拗らせて出した答えを
 間違いと思うなら そう思えばいいよ

 わかりあえないのはとっくに気付いていたけど
 正直 少しくらいわかってほしかった
 きみはすぐに巻き戻そうと 言葉を探すけど
 壊死んだ心臓は戻らないのよ

 嫌なことを嫌と言って壊れるような愛しさは
 避けられず壊れていたでしょう
 あたしの視界はきれいごとで濁ったままだ、
 きみは何も伝導えられず、あたしはその心奥に辿り着けず
 ずっと回り続けるだけ そうだったでしょう


 

YOMAI / 葛駄夜音・葛駄楼

 黎明にささめく縹色  さ さ 疾く永遠の話をしようぜ
 迷い子のように縋り合って 滔々と来ない明日を語ろうぜ

 我楽多に絆されて緋褪色  さ さ そんな綵花は捨てちゃっていいよ
 まがいものに命を乞うたって 終極 嘘みたいに腹ぺこだ

 されど生きた種では身に余る 朽ちた髑髏の花
 忘れ咲きが列列と 俤の切れ端


 鉄の煙がぼくの色  槁木死灰を懇ろに燃せ
 迷い子のように縋り付いて 否応無し 離さない万歳

 生易しい問であったならば 如何許り良かったことだろうか
 醜悪の病巣を切り落として 焼いてしまえば済む話なら それだけなら

 されど無邪気の実にも毒がある すべては水の泡
 花冷えに膝を折る  常初の

 残英 どうか ぼくに望みはかけないでくれ
 斜陽のときまで雨が降らないなんて優し過ぎたのだ、
 ぼくらは過ぎた宿木だったのだ。


 醜悪の病巣を切り落として焼いてしまえば済む話ならきっと良かったろうが
 邪魔者のいない未来もきっとどこかには在ったろうが
 その花のすがたを皆が皆 狂っていると言うのだ
 きみのしあわせの隣にはいられないようだ


 無邪気の実にも毒がある すべては水の泡
 潸然と夜露 降りる刻が躙り寄る

 


 残影 ゆめゆめ忘れじ一齣  あゝ 瞑色の稜線
 ほんとうはきみの目蓋が落ちてくるのを待っているよ、待っているから、
 捨てちゃえよ そんな徒花
 永遠の話をしようぜ

 

糸遊  / 松田っぽいよ

 此処は端から荒野 妄念も綴り 描き 掻き抱け
 其れが惨めに朽ち果てようとも おまえの血肉と成るだろう

 


 渇望、褪せた旋風 沃地はまだ影も見えぬ
 同胞に見えた姿は  其の実 只の枯木だった
 容のない声ばかりが 眠るように耳の奥に残る
 殊更 罪はないけれど  罰のように歩き続ける

 此の旅路に何の意味があって 何が無駄で
 わたしの安寧は何処に在る

 此処は端から荒野 妄念も綴り 描き 掻き抱け
 其れが惨めに朽ち果てようとも おまえの血肉と成るだろう

 


 絶望、殉情がすべて修羅の道  行けどまだ律が見えぬ
 幽かに遺されていた足跡も 遂に此の場所で消えた
 仙人掌すら息絶えた朱い地平の かなたで陰ろふ
 やわらかな光を飲み干して  幾度もおのれに説いてきた

 誰も助けてくれないなら 独りで賄う他ない
 他人に意味を求めても干からびるだけ

 


 此の旅路に何の意味があって 何が無駄で
 わたしの安寧は何処に在る

 此処は端から荒野 後悔も綴り 描き続けて、
 其れが人知れず朽ち果てようとも  おまえの血肉と成るだろう
 此処は端から荒野  きっとわたしは独り善がりに見えるのだろう
 此れまで押し殺してきたすべてが  わたしの血肉と成っている、
 然う誰も云ってくれぬのなら、云ってくれぬならわたしが云おう



 

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