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ileus / 塩音ソル

凍り付いて張り詰めて 呼吸も耳障りな程の
静謐に足を取られないよう
手探り耳を塞いで 外の音を摂取する

 “The late-night broadcast will go on”

“正しさ”の周波数 探せば 
音楽は21㌘を騙し騙し焦がすようで
揺らぎもしない薄ら氷が
統制し尽くされた部屋の温度を示すようだった

目眩くバイタルサイン 警戒色のsigh
概念的死による 終幕のためのliving will
この際こんな存在は 無かったことにして
あんたに預けた心の臓も 返してと謂ってみようか


錠剤貼り付いた感覚にチロリ喉元を掻く
固い布団に光を隠し
消灯時間帯は 他人の心電図から逃げるように朝を待つ

救いようのない人間も あんたは救おうと言うのだろう
他愛のない話 聞かせてくれまいか

“Don’t stop broadcasting”
呼吸も耳障りな程の 静謐に足を取られないように

このままならぬ肉体に 冴え渡る思考が遺り
滴り落ちる無機質の 優しさの雫を啜り、
きっと既に致死量の悔いを胃袋に落としてきた
気持ちが先にだめになって 肢体を引き摺る

どこに行こうと ぼくの輪郭は溶けやしないのに
すっかり病人染みちゃって おかしな話ね


21㌘の楔を聴覚に捩じ込んで
捩れに拗れた宿疾を 今宵こそ打ち斃せ

/ 葛駄夜音

夏が終わるような空白が 幾星霜続いている
淡い夢 翻り舞って 病葉となり飛んでった
いっそ秋風が吹き荒び あなたに飽きられたなら
我が身はこうも悴んで 身悶えすることもなからまじ

愚昧なぼくでもわかってしまうのだ
春が終わりを連れて来ること

零れる牡丹の髪飾り 風の通い路に彩をつける
解けた意志が背中でそっと糸を引く様
かくしても 聡いあなたはきづいてしまうだろう


徒言の葉に惑わされ うつせみは頽れる
夕凪は朱華 寂として 明星をただ待つのみ
いっそ秋風が吹き荒び あなたに捨てられたなら。
あなたの過去の一隅で 密やかに花を添えていよう

うつろうものと わかっているよ
須くこの色は秘するべし

頬を掠める細雪 ひとすじ氷雨となり落ちて
毀れたこころでこのまま 焦がれあくがれを続けたら
あなたが欲しい と零してしまうだろう

 

 

うつろうものと わかっていても

心任せに水を遣り 腐らせてしまうので。

手繰り寄せるように 温い俄雨で攫って

 

零れる牡丹の髪飾り 風の通い路に彩をつける

解けた意志 見目より脆く

あなたが欲しい と溢してしまうだろう

頬を掠める細雪 ひとすじ氷雨となり落ちて

毀れたこころはしめやかに 花の季を果敢無む しのびね、に

聡いあなたはきづいてしまうだろうね

プルート・イド・オキサイド / 旭音エマ・朝音ボウ

 Music/Lyrics ある調味料

 Arrangement 文無

ぽんこつのパレード
余儀がないよ胎土(たいど)
僕はほらの味も
わからないもんな

ね いつも       九つの似合と
いつも いつのことだ? 無数のプルートイド
螺子を巻いて      限りなくも近く
外を見せて       ひとつになれるかな


Q1.切れば漏れ出す血の透ける肌なら?
A1.どのみち姿は似通った

Q2.触れば熱巻く能もない裡なら?
A2.まるで興味もわかないみたいだ


心臓も肺もきっとないよ、僕はがらんどう。 兎にも角にも
処理と目蓋はぱっと落ちて、        自覚はないのか?
偶像に胚をそっと貸与、君はかわいそう。  錆はいつしか
問が解けたらまた明日。          深く根を結んで

一にも二にも     引導も壊もきっとないよ、君はそのままだ。
曰くはないのさ    肚裏と揺蕩(たゆた)に恋焦がれた、それは、
そう粘った 縋った  まだ見ぬ夢を、振れない指針を、
縛ったの。      居もしないなにさまを。


勘発(かんほつ)のプライド
きりがないよ傾度
僕は皿の端も
わからないもんな

ね 僕は        軽忽(けいこつ)の慈愛を
僕は だれのことだ?  隣のオキサイド
ピンを抜いて      ひとつひとつひとつ
手を下ろして      解(ほど)けていくのかな


Q�.指せば音出す仔細ない喉なら?
A�.まるで道理がわからないようだ


幻像に愛を!ざっと配当、僕はがらんどう。 弥(いや)が上にも
狐狸と火蓋は切って落ちて、        受諾がないのだ
摺動が良い、と取った芯を君は投げ捨てて、 黴はいつしか
動かす意図もないのでした。        広く柄を包んで

現(げ)にも今にも   残像よ、毎夜じっと毎夜、君はあのままだ。
思(し)惑はないのさ  澱を那由多に掻き起した、それは、
そう思った 思った  あまりに既を、素気(すげ)ない磁針を、
思ったの。      来やしないこれからを。


心臓も肺もきっとないよ、僕はがらんどう。 曲りなりにも
矩と数多はもっと濾して、         怖くはないのだ
戻道を廃、と言った禁を君は打ち捨てて、  至微はいつしか
沿い続けてはまた明日。          酷く手を刻んで

何も彼にも      言動の罪もきっとないよ、君はこのままだ。
したくはないのさ   檻と僅かに瑟(しつ)を鼓した、それは、
ああ気取った 衒った 盛りに柘植(つげ)を、告げない帰心を、
祈ったの。      似もしないさまざまを。


この擬似的な息を吸って吐いて、
君のとろくさい鼓動を模して、
僕のこころはたしか鳴動していた、いたんだ。

Krise / 松田っぽいよ

才ある他人への妬ましさを 上手く噛み砕けずに
攻撃衝動に化けそうなところをギリギリで手懐けている
作りたかったのは芸術なんかじゃなく 自分の居場所かもな
美しいものを探しに行くことは 恐ろしくすらある

これまでの努力を信じられないときは 何をしたって雲を掴むような心地だ
見なくていいものは見なくたっていいのに
理由は自分のためだけでいいのに

特別なんかじゃない、わかってしまって 足が止まる
それにずっと気付かない程 都合よく愚かでもなかった
名状し難い焦燥に生き急がされて 夜を削り僥倖を待つ
ひとりじゃ生きていけないのに ひとりじゃなきゃ迷ってしまうね


劣等感で酷く危機です
不意に訪れるもので
貰った言葉を信じてみたくても 届かないときもある

 

悔しさから目を逸らしちゃだめだな
他の名前を探そうとしていちゃだめだな
凪へ凪へと 逃げ続けた人生に ひとつくらい譲らない矜持を持っていたい

自分の限界が見えてしまって 虚しくもなる
優しさも哀れみも効かないのなら 惰性だっていいから 息を吸うのだ
形になった作品たちだけが あたしを認め 生かしてくれる
意味もなく徘徊いてしまう日は ふたりで孤独の歌をつくろう


好きなことだけして食っていく夢は
臆病風に攫われてもう叶わないけど
生き辛さをひとりで転がして ただ腐っていくだけなんて癪だろう
心奪って 爪痕を残してみたいだろう?


特別なんかじゃない、わかってしまって 足が止まる
才能がないともう気付いてしまって それでも足掻いて、
形になった作品たちだけが あたしを赦し 生かしてくれる
それでもまだ足りない夜に また新しい歌をつくろう

ぼくらの痛みを寄せ集めて 少しは優しい時代をつくろう

 

リベット / 九弐式

これが心じゃないなら それでも構わないさ
あなたを繋げりゃ 毒でも


余程ロボットみたいな眼だ 人間達の方が
不完全であることを惨めだと言うけれど
科学で魂を繋げるなら あなたはそれを望むか?
ぼくが望むと言ったならば 選んでくれるか

いのちがなければ死もないし 悲しくなんてない筈でしょう
壊れたならば直せばいいだけと信じてきたでしょう

胸を締め付けても 何か潰れるわけでもない。
肋骨の奥 ずっと軋んでいるこれが心じゃないなら それでも構わないさ
あなたを繋げりゃ 毒でもいい。


代わりの螺子などいくらでもある いくらでもあるけど
微睡の静寂の中で 死出の灯を垣間見た
科学ではぼくを救えぬとして あなたはそれを恨むか?
ぼくがさよならを言ったならば 棄ててくれるか

こころがなければ謬もなし 異常はじきに消えるでしょう
神様なんていないと言うあなたを 誰か救えるだろうか


鋼鉄の天 灰色の雪で翳る
切れかけたネオン 怪物たちは過去を呑み干した。
ぼくはロボット 何度だって鋲を打ち込む
ぼくはロボット いつだって

この煤けた都市で 生き抜くには優しすぎる
あなたはつまらない道徳と刺し違えて死んでしまうよ、そのうち。
それでも構わないと
思えないから今、ぼくは来た。
ぼくはぼくの意思でここに来た。


あなたが少し信じているという 天国や地獄までは行けぬだろう
ぼくのいのちは あなたを救いはしないだろう
天国にも地獄にも逝けぬだろう

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